東京地方裁判所 昭和43年(ワ)11194号 判決
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〔判決理由〕およそ、賃料の定め方としては積算方式、スライド方式、総合方式など種々の計算方式があり、その方式はいずれもそれぞれ理論的な根拠があり、その基礎となる前提が正しいものとすれば、その方式によつても同一の結論に達するものと理論上は考えられる。すなわち、積算方式は、契約当事者が経済的にも法律上も完全に自由であり、主観的事情は賃料決定の重要な要素ではないということを前提とするか、主観的事情が計算上明確に算出されるというこを前提としてのみ完全に適正賃料を算出されうるものと解されるが、現実にはそうではなく、単純に積算方式によるときは一般に当事者が任意に定める額よりもかなり高額になる場合が多く、本件においてもこれを前提とする原告の主張は、現実に行われている賃料額に比べてかなり高額となつていること弁論の同趣旨により明らかである。そうすれば、現在行われている賃料が果して客観的な適正賃料であるかどうかの問題は残るとしても、原告主張の積算方式をもつてただちに正当であるとして採用し難いものが残る。次に、被告主張のスライド方式については、その基礎となる既定賃料が適正賃料であり、その賃料は地価の上、下により常にスライド式に上下するということを前提としてのみ成立しうるものと考えられるが、取引の実際においては、賃料は当事者の力関係など種々の要因が複雑に作用して定められるものであつて、現在賃料が直ちに適正賃料とはいい難く、一般的に経済変動の激しい場合にはややもすれば個人生活においては経済変動について行くことができず、これを前提としてかなり低額に定められることが考えられ、既存賃料を単純にスライドしたものが適正賃料であるとも言い難い。そうすると、賃料は種々の方式を総合して妥当なものと認められるものを採用するのが相当であると解される。
右に従い本件に顕れた証拠を検討すれば、原告が主張する単純な積算方式による賃料が、現在本件土地と同程度の土地の賃料と比べてかなり高額となることは、<証拠>に照して明らかであり、スライド方式による賃料と積算方式による賃料差額を折半する甲第七号証の方式も一見公平妥当には見えるが、理論的な根拠としてはやや説得力に之しく、折半しなければならない必然性を認めるに足るものとはいい難いものと解される。してみると、本件に顕れた証拠によつては、スライド方式を基礎として採用し、これを他の方法により算出した賃料と比較検討して適正賃料を決定するのが相当である。そして、そのスライド方式による基本となる賃料は、<証拠>を総合すれば、比較的変動の少なかつた昭和三二年六月当時の賃料を採用するのを比較的妥当とすることが認められる。右に従い前示甲第二及び第七号証によると、右被告等に対する本件土地の賃料は昭和四二年七月一日において3.30平方メートル当り一か月金六六円、昭和四三年九月一日において3.30平方メートル当り一か月金七九円となる。右賃料は甲第七号証中の比較賃料に比べて妥当であるし、前示乙第七及び第八号証の賃料に比べても相当であり、証人井口すみ子の証言により認められる、原告が本件土地の近所を他に賃貸している賃料実例に照しても不当とは言い難い。してみると、右賃料をもつて適正賃料と解するのを相当とする。 (三宅純一)